前モデルの"SA-14 ver.2"から大きく飛躍した音質と全く新しいデザインが高い評価を受けベストセラーとなった"SA-11S1"。そしてその弟機としてクラスを超えたパフォーマンスを備えてデビューした超ハイC/Pモデル"SA-15S1"。当店でもチューン仕様がそれぞれの価格帯でナンバー1の売れ筋モデルとなっており、ノーマル ちょっと見ただけでは区別がつかないほど良く似た兄弟ですが、その違いを比較することでそれぞれの持つ魅力を検証してみようと思います。秋のオーディオ購入の参考にして頂ければ幸いです。 ■外観、筐体 ・見た目は互角、SA-15S1のC/Pの高さが際立つ ・銅メッキシャーシ、アルミスタビライザー等細部の造り込みはSA-11S1に軍配 タイトル画像の上がSA-15S1、下がSA-11S1です。正面から見る限り、15にヘッドフォン端子がある以外は全く同じに見えます。それもそのはずでフロントパネルやアルミの側板、天板は同じパーツが使用されているのです。フロントパネルは3ピースのアルミ押し出し材で構成された立体的なデザインとなっています。SA-11S1の発売時に随分贅沢な筐体を作ってきたなと思ったものですが、定価が半額以下のSA-15S1にも同じパーツを使ってくるとはなんと贅沢な!もちろんブルーの発光ダイオードによる光の演出も共通です。これは好き嫌いがあるのでON/OFF切り換えができるようになっているのは親切な設計だと思います。 どちらもディスプレイには従来のFL蛍光管を使用したタイプではなく、ノイズの極めて少ない液晶ディスプレイとなっています。ここにも音質への徹底した配慮がうかがえます。もちろん消灯することも可能です。 クロムフリー1.2mm厚鋼板を使用したシャーシと3.0mm厚の底板からなるダブルレイヤー構造とアルミダイキャストによる脚部も両機に共通の仕様です。異種金属の組み合わせで素材の共振を抑えるとともにアルミの特性により、不要振動を柔軟に逃がし音を濁らせることのない良く考えられた設計です。重厚かつ解像感の高い低域はこのあたりの効用と思われます。ただガッチリとリジッドに支えるだけの設計ではメカ自身から発生する振動や外来の不要振動のエネルギーがなかなか消えず再生音を濁してしまいます。 リアパネルを見ると大きく違いがあります。SA-11S1は真鍮削り出し金メッキのアンバランス出力端子とバランス出力端子を持ち、リアパネル全体が銅メッキ処理がされています。対するSA-15S1はアンバランス出力は11と同じ削り出しですが、バランス出力を持たず、銅メッキ処理されてもいません。スチールの色(シルバー)そのままの仕上げです。このあたりにコストの差を感じますが、20万円の価格差を考えると15はとてもよく出来ていると思います。 また、筐体内部も11のみの仕様として天板を支えるピラー、メカニズム上面に取り付けられたアルミ削り出しのスタビライザー、内側全体の銅メッキ処理などがあります。 逆に15は11にないヘッドフォン端子を備え、ヘッドフォンアンプもSA-17S1で高い評価を受けた完全ディスクリート構成の高音質タイプを高速電流バッファーアンプやオーディオ用電解コンデンサーでさらに磨き上げています。中途半端なヘッドフォンアンプを買うよりも手軽に良い音が楽しめます。 ■メカニズム、D/Aコンバーター ・双方とも自社製メカモジュールを搭載 ・SA-11S1は音色変化を楽しめる3段階切り換え式デジタルフィルターを搭載 ドラブメカには11、15とも自社開発のオーディオ専用モジュールを採用しています。ソニー製メカやパイオニアのDVDメカを採用している他社製品に対してはこの部分に大きな優位性があります。サーボ、デコーダー基板にガラスエポキシ材を使用したこのメカモジュールはノイズ放射が大変少なく、これを更にシールドすることでシャーシと合わせBOX構造にし、筐体内部へのノイズをシャットアウトしています。ディスクトレー部には防振効果のある塗料を塗布した高級感のある仕上がりで、色はレーザーの乱反射の影響が少なく音質的に好ましいブラックです。これはカメラの内部で光の反射を抑えるように塗装されているのと同じ考え方ですね。 D/Aコンバーターはそれぞれ別のものを採用しています。ここが両機の音質を決定付けいているもっとも大きな差異と言えるでしょう。SA-11S1は今回が初の採用となるNPC(日本プレシジョンサーキッツ)製の「SM5866AS」を左右独立で2基搭載しています。これはモノラル専用で一般的なDACでは通常内蔵されるI/V(電流/電圧)変換回路とデジタルフィルターを持たず、 DSD信号とPCM信号それぞれに固有のクロックを必要とするなど手間のかかる仕様となっています。SA-11S1ではHDAMを用い、I/V変換、ローパスフィルター回路、アナログ出力回路の3段全てにHDAMを使用しています。HDAMコストはかかるもの、 S/Nに優れ、ハイスピード(オペアンプの約5倍)という利点があります。 また、かつて切換式フィルター回路でCD-7が好評を得ましたが、SA-11S1もDSPによるSACD/CDそれぞれに適用可能な 3段切換式デジタルフィルター、DCフィルター(通常のCDは1.7Hz以下をカットする。OFFにすると音場の見通しが良くなる)のON/OFF、ノイズシェーパー(通常のCDは入っているデジタル帰還。OFFにすると音の艶やかさが増す)のON/OFFを備え、特性を切り換えて楽しめます。 SA-15S1にはSA-14等で既に多くの実績があるシーラスロジック社製CS4397が搭載されています。。1ビットDSD信号に対応するのはもちろん、内蔵するダイナミック・エレメント・マッチング回路によって従来CDの16ビットPCM信号にも対応した、超低歪、高分解能を誇る高精度のICです。音質的にはこちらの方が従来のマランツトーンに近く柔らかさと美しさを兼ね備えた聴き疲れしない再生音を聴かせます。 いずれのモデルもシステムクロックは、±5ppmの高精度クリスタルを音の要であるD/Aコンバーターの直近に配置し、ジッターや信号のデューティ歪等にも注目してD/Aコンバーターが最大限に性能を発揮するよう配慮されています。 ■電源回路、アナログ出力回路 ・贅沢なパーツ構成のSA-11S1 ・コストは抑えつつも堅実な設計のSA-15S この部分もコストがダイレクトに影響してくるので11と15には大きな差があります。SA-11S1の電源部にはOFC巻線を使用した大型スーパーリングトロイダルトランスを採用。トランスの振動が音質へ影響するのを防ぐため、高比重体でケース内部が充填されています。その他オーディオ電源部の整流回路にはショットーキーバリアダイオードやマイカコンデンサーを採用するなど、オーディオ用高音質パーツが随所に採用されています。SA-15S1の電源部にはOFC捲き線を使用したEIコアトランスを使用。またD/Aコンバーターやオーディオ回路においてはそれぞれ専用の電源回路を搭載し、相互干渉を排除しています。 SA-11S1は前述の通りアンバランス出力とバランス出力の2系統の出力を持ち、双方ともに同グレードの出力回路となっています。I/V変換後のLPF回路(Low Pass Filter)はディスクリート構成のHDAM回路を、さらに出力回路には電流帰還型HDAM回路により低インピーダンス、ローノイズ化をしました。スーパーオーディオCDのような広帯域ハイスピード再生が必要とされるディスクにも余裕を持って対応します。またバランス出力はノイズ対策を十分に考慮したXLR端子によるフルバランス型アナログ出力となっています。アンバランス出力同様の電流帰還型HDAM回路で構成し、アンバランス出力と同様の出力インピーダンスや性能を確保しています。 SA-15S1のアナログ変換後のローパスフィルター段には、マランツオリジナルのHDAMを搭載したワイドレンジ、ハイスルーレート、低ノイズ特性のローパスフィルターを搭載。量子化ノイズをフィルタリングするともに群遅延を考慮した音質重視の設計となっています。アナログ出力回路はマランツの回路高速化技術「Absolute SA Technology」を適用した電流帰還型。 コストの制約がゆるい分SA-11S1の方が採用パーツのグレードは高くなり、新技術の投入による音質改善が図られていますが、SA-15S1も価格の制約の中できっちりと今までの技術の蓄積を感じさせる堅実な設計が行われています。いずれも設計者のエゴを押し付けるような極端な音作りではなく、素材(音源)の持ち味を素直に引き出してやろうという意思を感じます。 ■音質チェック ・SA-15S SA-15S1は穏やかで爽やかな音調を基本とし、過去のマランツ製品からの連続性を強く感じさせます。SA-14 ver.2やSA8400などで実績のあるD/Aコンバーター(シーラスロジック社製CS4397)を採用しており、価格は下がっていますがSA-14 ver.2の正統な後継機と言えますね。基本をしっかり押さえた作りの良さは他社の同価格帯の製品とは比較になりません。柔らかさを持ちながらかなり細かい部分まで正確に描写する解像度の高さも持ち合わせています。またマランツ製品らしく音場表現が巧みで、空間の広さと深さをリアルに感じられます。優秀なライブ録音のソフトの良さをしっかり引き出してくれますね。 ノーマル品はスッキリ爽やかな音が持ち味ですが、チューン仕様はそこに厚みと締まりが加わり、雰囲気だけでなくよりリアルに、より臨場感高く音楽を再生します。いわゆる中級モデルに位置するプレーヤーですが、C/Pの高さは抜群です。音質では下手な高級機を凌駕していますし、外観も上級機ののSA-11S1とほぼ同じですから。後述するSA-11S1の圧倒的な解像度の高さや凄みさえも感じる実在感には及びませんが、このクラスでは比肩し得る製品がないのも事実です。他の製品やノーマルのSA-15S1をご検討中の方には是非一度試聴されることをお勧めします。 ・すべてが高次元でバランスした最高のプレーヤー/SA-11S1 SA-11S1は一言で言うと精緻な音。従来のいわゆるマランツトーンは柔らかさ、温かみを強く感じさせる音でしたが、この数年間で徐々に変化してきたように思います。特にこのSA-11S1は個々の音の描き分け、音場の立体感の表現力が素晴らしい。新採用のNPCのD/Aコンバーターの効用と思われます。低ノイズで特定の帯域を強調するような音作りではない為、他社のプレーヤーでは聴こえてこない細部の音まできっちりと表現します。音の色付けはアンプやスピーカー、アクセサリーでもできますが、ディスクに収録された情報を引き出すという仕事はプレーヤーにしかできないことですからここがダメなプレーヤーは問題外ですね。 チューン仕様にするとSA-11S1の弱点である音の押し出し感が補強され、音像の実在感が増します。分かり易く言えば目の前で演奏しているような感じです。JazzやRockを聴かれる方にも自信を持ってお勧めできます。ブライアン・ブロンバーグの「Wood」で確認しましたが、SA-11S1のスムーズで解像度の高い低音に押しの強さも加わって最高に楽しめました。微小レベルの再現性もアップし、音の立ち上がりが速く、消え際までまったく不自然さがありません。何もかもが非常に高い次元でバランスしており、何も余計なことを考えることなく音楽に没入できるという意味で最高のプレーヤーであると言えるでしょう。これを聴いてしまったら数百万円のハイエンド機の存在価値を疑いたくなりますね。 ■総論、まとめ 絶対的なクオリティの高さでは文句なくSA-11S1の勝ちは揺ぎ無いものですが、SA-15S1もそのC/Pの高さという意味ではSA-11S1さえも上回っていると言っても過言ではないと思います。予算が許すのであればSA-11S1をお勧めしたいですが、費用対効果を考えたときのSA-15Sの満足度は抜群ですから予算に余裕がない人も安心して下さい。どちらも設計が基本に忠実で素性の良いプレーヤーですから当社のチューンのベースとしては最高です。音におかしな癖を持った他者のプレーヤーですとこうはいきません。砂糖で甘いからといって塩で辛味を加えるようなものですね。本当に良い素材であれば素材そのものの良さを調味料でさらに引き立ててあげることができます。これがマランツ製品をチューンして販売する理由です。 SA-11S1はチューン仕様が、SA-15S1はチューン仕様とノーマルの両方が店頭で常に試聴可能ですので是非CDをお持ちになって下さい。納得いくまでご自身の耳で確認して頂けます。 SA-11S1 SA-15S1 製品紹介ページ ←価格情報、ご注文、お問い合わせはコチラ |